外池 利夫 院長（くぬぎ台歯科診療所)のインタビュー

歯科医師としてのキャリアの大半をこの地で

歳の離れた従兄弟が歯科医師になったことで、私もそれを目指すようになりました。実は絵描きになりたいと思っていたこともあったのです（笑）。美術部で絵を描いていましたのでね。細かいことが好きなものですから、歯科が向いてるかもしれないという感触は持っていました。実際、中に入ってみますと、技工的なものもありますし、細かい手仕事の世界が自分に向いてると思ったものです。
大学卒業後は矯正と小児歯科を学びました。当院で私が矯正を手がけることはありませんが、歯並びや噛み合わせなど、矯正的な歯科の考え方を学べたことは無駄ではなかったように思います。小児歯科については、専門医のもとで勉強をしました。子供の治療は大変なところもありますし、以降の診療にずいぶんと役立ったように思います。
私がこちらで診療を始めたのは26歳の時のこと。前の院長が体調を崩され、医局経由で依頼を受けてのことでした。あれからもう40年近くが経つのですね。歯科医師としてのキャリアの大部分を、ここくぬぎ台団地で過ごしてきたということになります。

くぬぎ台団地にお住いの方の口腔内の健康を見守っていく

くぬぎ台団地の個数は約千戸。周辺を含めれば1500ほどでしょうか。以前は小学校もありましたが、子供の減少に伴い廃校となりました。団塊の世代の大半が仕事を引退されており、来院される患者さんの多くが高齢者となっています。ゆえに、義歯（入れ歯）を必要とされる方が非常に多いのです。義歯については、保険診療の範囲内で最大限良いものを作っていくことをポリシーとしています。長いキャリアの中でコツもつかんできたと思っていますし、1つひとつの工程を手を抜かずにやっていくことが大切です。義歯については、概ねご満足いただいているのではないでしょうか。
今後については、訪問歯科のニーズが高まっていくことが予想されます。現在も高齢者施設の嘱託医を務めており、併せて、以前は当院に通院されていたものの、足が不自由になるなどの理由で通えなくなった方々をフォローしています。設備等の問題がありますから、医院と同じというわけにはいきませんが、できるだけのことをしてあげたいですね。

お口の中を常に清潔に保っていくことが大切

歯を失う要因の最たるものが歯周病です。歯周病への対策は、ブラッシングが主たるものになります。その指導に力を注ぎ、かつ、定期的に通院いただき、クリーニングをしていくことになります。
歯周病は全身の疾患に強く影響することがわかってきました。歯周病が改善することで、糖尿病などの全身疾患の経過が良くなるケースも見られます。最近では、誤嚥性肺炎というワードがポピュラーになってきました。「誤嚥」というと、咳き込んでしまって誤って、というイメージですけども、寝てる間に“自然に”入ってしまうものなのです。ですから、お口の中を常に清潔に保つことが、健康を維持するために大切なことになります。

歯磨きは歯ブラシだけで

歯周病対策はブラッシングが主と申しましたが、ご高齢になりますと、歯ブラシを長く持つことも負担になることがあります。加えて、リウマチなどで手が思うように動かない人もいらっしゃいますよね。そうしたケースでは持ち手が太いものを使っていただくなどの工夫が大切です。
私はブラッシングの際、歯磨き粉を使うことをお勧めしていません。歯磨き粉を使うと泡でいっぱいになって、やった気にはなるのですけども、その分、歯ブラシを当てる時間が短くなります。我が家には歯磨き粉は置いていません。歯ブラシだけでテレビなどを見ながらずっと磨き続ける。それが一番歯をきれいにするコツなのです。ぜひそれを心がけていただきたいですね。

地域の皆さんへメッセージ

長らく保土ヶ谷区の口腔がん検診の担当を仰せつかっています。実際に口腔がんだった方を発見したことも1人や2人ではありません。早期発見できたときは、やはり良かったと思いますね。口腔がんの検診は、胃カメラなどと比較すると、その発見率は非常に高いものがあります。スコープなどを通してではなく、直接粘膜を見られるわけですから、それくらいの違いがあるということですね。検診時のみならず、通常の診察でも必ず粘膜のチェックはおこなっています。それは私に課せられた役割の1つでしょう。今後も地に足をつけたベーシックで丁寧な治療を続けてまいります。地域の皆さんの健康をお口から見守っていくのが私の役割であり、それを全うしていきたいですね。

※上記記事は2022年2月に取材したものです。
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