横山 太郎 院長(横山医院 在宅・緩和クリニック)のインタビュー

横山医院 在宅・緩和クリニック 横山 太郎 院長

横山医院 在宅・緩和クリニック 横山 太郎 院長 TARO YOKOYAMA

埼玉医科大学卒業後、同大学国際医療センター腫瘍内科に入局。横浜市立市民病院緩和ケア内科では数多くの診療経験を積む。2017年、横山医院に緩和ケア内科・腫瘍内科を開設。2019年、上星川駅近くに横山医院 在宅・緩和クリニックを開院。

生まれ育った地域で、緩和ケアの専門クリニックを

祖父が保土ヶ谷区峰岡町に開院した横山医院は、3代続く地域に根差したクリニックとして多くの方にご利用いただいてきました。祖父も父も地元の方から頼りにされていましたが、医師の家系に育ち、幼い頃から跡継ぎという立場に義務感やプレッシャーを感じていました。思春期にはそういうものに対する抵抗感を覚え、周囲からの眼差しに苦しめられた時期もありましたね。祖父の葬式で、近所の方から「私たちが亡くなる時に看取るのはあなたなんだからしっかりして」と言われたことを今でも覚えています。それが医師を目指すきっかけになりました。勉強を重ねる中で、様々な方からの助言をいただき、「医師になって終わりじゃない、継ぐことだけが全てじゃない、その先に自分の人生がある」と感じるようになり、医師としてだけでなく、人として地域に貢献できることをしたいと思うようになりました。
埼玉医科大学卒業、研修後、当初は循環器内科なろうと考えていました。しかし、実家のクリニックを手伝ったことで自分が目指ざす方向性が明確になりました。昨今、3人に1人はがんで亡くなり、今後更に悪性疾患の患者さんが増えていく。その事実に直面し、この地域には、がんの専門家が必要だと確信したのです。折しも、世間ではがん対策基本法が成立された時期で、クリニックの社会的責任として、がんの医療に関わりたいと強く思いました。そして「治療してきた患者さんの思いや歴史を知らずに、最期の緩和だけ関わるというのは、患者さんの幸せに繋がらない」と尊敬していた恩師からの助言もあり、腫瘍内科を専門に学び、横浜市立市民病院緩和ケア内科で診療経験を重ねました。2017年に横山医院に緩和ケア内科・腫瘍内科を開設し、2019年、上星川駅近くに横山医院 在宅・緩和クリニックを開院しました。

訪問だけでなく、外来による緩和ケアも

当院では、外来や訪問による緩和ケアを専門におこなっております。これまで本院の横山医院でおこなってきた緩和ケアをそのままに、患者さんだけでなくご家族の方とも一丸となり、患者さんを支えるチーム医療をおこなっています。本院からお付き合いのある患者さんだけでなく、講演などがきっかけとなり、ご紹介でお越しになる患者さんもいらっしゃいます。そのうち7~8割は、がんや神経難病などの命に関わる大きな病気を抱えている方々です。緩和ケアは抗がん剤をはじめとした抗ガン治療の有無に関わらず、病気になった段階で、開始することが望ましいです。緩和ケアをはじめるのに早すぎてはいけないというようなことはありませんので、気兼ねせずにまずはご相談いただきたいです。尚、外来はしっかりと時間をとるために、予約制となっています。

病院とのスムーズな医療連携で、安心できる地域包括ケアを

今でこそ緩和ケア病棟は9000床ほどになりましたが、がん患者の6割はがん拠点病院でも緩和ケア病棟でもない病院で亡くなられており、専門家も適切な薬も足りていないのが現状です。患者さんが増え続ける中でがん拠点病院といった専門病院で治療から全ての医療を提供するのには限界があります。とは言え訪問診療だけでは完結できず、入院ができる病院とのスムーズな連携が必要です。そのために地域包括ケア病棟でも勤務をしています。入退院が可能な地域包括ケア病棟と訪問診療医が手を取り合い、「入院が望ましい時は入院、自宅が望ましい場は自宅」という流れを作ることが、地域の方が安心できる生活に繋がると思っています。当院の場合は連携する病院でも私が勤務していますので、週に1回病院であうのか、自宅であうのかを実現することが出来ます。これが切れ目のないケアです。

また、今後も本院との医療連携は密におこなっていきたいと考えています。在宅医療で一番連携を必要とするのは整形外科ですから、本院の3代目院長であり、整形外科医として活躍している弟の横山正先生との連携は欠かせません。本院では整形外科の訪問診療にも力を入れ、在宅医療に深く関わっています。祖父や父が人生を費やして築き上げた横山医院を、私たち兄弟が新しい形で継続させていきたいと思います。

本来の「健康」を意識し、関わる全ての方を緩和したい

コロナ禍を経て、どんな感染症よりも「不安」が一番伝染しやすいと実感しています。患者さんを取り巻く全ての人の不安を和らげていかなければ、結局は患者さんを幸せにすることはできません。ですから患者さんを取り巻く環境に目を配ることを1番に心がけています。患者さんご本人だけでなく、患者さんのご家族を含め、関わる全ての人が対象になるのが緩和ケアです。これまで指導をしていただいた先輩医師の方々、診療や情報を共有するケアマネージャーやスタッフ、家族も含め、周りから様々な教えをいただくことで自分が成長することができました。これからは、自分が関わる多くの方へ手を差し伸べ、経験や知識を活かし地域を「緩和」をしていくのも大事なことだと思っています。
WHOの定義では「健康とは、肉体的、精神的、社会的に完全な状態であり、単に病弱や病気がないこととは限らない」としており、「病気」の反対は「健康」ではありません。医療と言えば「病気」だけにフォーカスしてしまいがちですが、長寿大国であり、自殺の多い国でもある日本において、肉体的、精神的、社会的に健康で長く幸せに過ごすためにはどうすべきか、ということに目を向けなければなりません。心身ともに満たされていて社会から孤立しないこと、目の前にいる一人の患者さんだけでなく、地域全体、しいては日本全体を緩和することが私の目指していることです。今後は、苦しんでいるのに打ち明けられずにるご家族の方やご遺族に対する診療やケアにも関わるため、土曜日に看護師による相談を行っています。
大きな病気になるとその人の人生に影響を与えることは間違いありませんが、長い人生の中でみれば一部であることも間違いありません。生活をする上での楽しみなども、同じ人生の一部に変わりないのです。当院では、診療以外に、定期的に華道などレクレーションの時間を設けています。立場や職種に関係なく、人間は関わり合い続けることで心が豊かになります。さらにはこうした感性が診療の中に、日本家屋が客人を招き、コミュニケーションを取る『床の間』のような空間や時間を作れるようになることを実感しています。病気だけでなく、簡単ではないけど人や家族、そして生活も良くできるクリニックを目指しために今後も継続していく予定です。本当の意味で、「健康」になることを目指し、「これでいいのだ」と思える医療をおこないたいと思っています。

これから受診される患者さんへ

当院では、木の温もりを感じる落ち着いた空間で、アロマによるリラックス効果を感じながらお話をすることができます。現在抗がん剤治療中であっても、緩和ケアを受けることは可能です。ちょっとした生活の相談や不安の徒労を含め、何でもご相談いただきたいと思います。

※上記記事は2019年8月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

横山医院 在宅・緩和クリニック 横山 太郎 院長

横山医院 在宅・緩和クリニック横山 太郎 院長 TARO YOKOYAMA

横山医院 在宅・緩和クリニック 横山 太郎 院長 TARO YOKOYAMA

  • 出身地: 神奈川県
  • 趣味・特技: 音楽・映画鑑賞
  • 好きな本: 第1感
  • 好きな映画: スターウォーズ
  • 好きな言葉・座右の銘: 公平・大義
  • 好きな音楽・アーティスト: サカナクション、ノラ・ジョーンズ
  • 好きな場所・観光地: 沖縄

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