片桐医院 片桐 寛之 院長 HIROYUKI KATAGIRI
北里大学医学部卒業。同大学消化器外科。先代である父の跡を受け継ぎ、『片桐医院』の2代目院長に就任(相鉄線「上星川駅」より徒歩2分)
北里大学医学部卒業。同大学消化器外科。先代である父の跡を受け継ぎ、『片桐医院』の2代目院長に就任(相鉄線「上星川駅」より徒歩2分)
結局は、医師である父の背中を見て育ったということなのでしょう。先代である父から「後を継いでくれ」と言われたわけではありません。父と息子のよくある関係で、普段から仲がいいわけでもなく(苦笑)、むしろ私は“聞かん坊”でしたから、ことあるごとに反発していた気がします。それが気が付けば同じ道を歩んでいるわけですから不思議ですよね。
大学卒業後は消化器外科の中でも肝胆膵外科に所属していました。きっかけは先輩からの「お前、肝臓をやってみないか」という一言だったのですが、実は私が最も苦手と感じていたのがこの分野でした。外科に籍を置くと、様々ながんの治療に携わるわけですけども、胃や大腸に比べ、肝臓やすい臓は解剖学的に複雑で、手術の難易度も高く、時間も倍以上かかります。大変なことは重々承知していましたが、「苦手なまま過ごすというのも…」と思い、お誘いを受けたんですね。実際に手術を執刀するようになると、無事終わったときの満足感がまるで違っていました。のみならず、みんながみんな携われるものではありませんから、それがまた自信につながっていったのです。今では声をかけていただいたことに本当に感謝しています。
『片桐医院』の後を継いだのは、10年と少し前のことになります。きっかけは父が病に倒れたことでした。あまり自分のことを言わない父が「最近調子が悪い」と漏らすようになり、検査をしてみたところ、胃にがんが見つかったのです。父の手術は私が担当しました。ただ、切るには切ったのですが、お腹を開けてみると、どこもかしこもがんで、手のつけられない状況でした。その時になって初めて覚悟をしたのです。
父の頃の医院は、道路を挟んだ場所にあるビルの3階にありました。あれは父が具合が悪くなる直前のことでした。現在の場所に空き地が出て、「息子と一緒に診療をしたい」と父が望み、購入したのです。父と一緒に診療をすることは叶いませんでしたが、父の想いを汲んでこれからも診療を続けていきます。
父の頃から来院いただいている患者さんも多く、ご家族ぐるみで代々いらしていただいている方も少なくありません。目立つのはやはり、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を抱えている方、そしてみなさん長寿になられてますので、認知症が増えてきましたね。それから、今まさに大変な状況が発熱外来です。当院の場合、朝の段階でその日の予約が埋まっている状況です。
私の専門の消化器については、意外に少ないのです。というのも、消化器で長患いをする方はそんなにいらっしゃらないんですね。何かしら原因が見つかり、治療に進むという人がほとんどだからでしょう。もちろん専門分野ですので、お腹の調子が悪い、便秘になった、というご相談は日々ありますし、しっかりとした道筋をつけて差し上げたいと思っています。
お顔を見てしっかりお話をうかがうことを心がけています。電子カルテの時代になって久しく、患者さんに背を向けてモニターを見続けるといった医師がいることも承知しています。「早く」という気持ちはわかりますけども、それ以前に人と人が話し合ってるわけですので、しっかり向き合うことは基本中の基本と思うのです。
同じく最近の傾向としてあるのが、触診の機会が薄れているということ。いわゆる手当て、ですね。。世には治らない病気があります。その代表がすい臓がんです。すい臓がんの患者さんは、診断され、最後の手術まで進めるのは15人に1人と言われています。その手術に進んだ方も、1年以内に再発するケースがほとんどです。残念なことですが、救われない方が非常に多い病気なんですね。そうした方々がいよいよという時に、手を当て、話を聞くだけのことでも、「すごく安心する」という患者さんやご家族の声をこれまで数えきれないほど聞いてきました。私が手当てを重視するのは、おそらくそうした経験からきているところもあるのでしょう。
心電図やレントゲンをはじめ、必要に応じて超音波検査をよく用います。超音波は「第三の目」と言われるくらいで、見たいものを“見にいける”利点があり、勤務医時代から勉強を重ねてきました。すい臓がんについても不十分ではありますが、発見の端緒とはなりますし、またそのほかの疾患、特に乳がんについては非常に有用なツールとなります。私は大学院で博士号を取得したのち、横浜保土ヶ谷中央病院で乳腺専門外来を担当していたことがあります。乳がんの検査ではマンモグラフィーがありますが、超音波検査も非常に有効で、実際にここで乳がんが見つかった方もいらっしゃいます。
横浜保土ヶ谷中央病院は、先代の父の頃から緊密に連携をとってきました。内視鏡検査を含め、大きな検査は病院にお願いすることが多いのですが、その結果を受け、説明は私自身がおこなっています。病院の規模が大きくなると、外来で説明の時間が十分にとれないという現状があります。患者さんが聞きたいことをしっかり聞けるようにするためにも、病診連携は重要と考えています。
今病気を抱えている患者さんはご自分の体のことを自覚されていますが、普段病院にかかってない方はその限りではないでしょう。実は、かく言う私もそうでした。3年ほど前に出血性胃潰瘍になり、手術を受けたことがあります。それまでは「あれも出来る、これも出来る。体も動くし」という感じでしたが(苦笑)、過信していたのでしょうね。幸いにも私は潰瘍でしたが、当然、わかってからでは遅いものもあります。早期発見・治療につなげていくためにも、定期的な健康診断を受けていただきたいと思います。
インターネットの時代ですので、症状をチェックすれば多くの情報を簡単に目にすることが出来ます。ただ、その情報がご自分に合ってるかどうかの判断は難しいですから、迷ったら専門家に相談されるのがいいでしょう。何か気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
※上記記事は2023年1月に取材したものです。
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