中山 裕也 室長(民間学童 MyPort)のインタビュー

民間学童 MyPort 中山 裕也 室長

民間学童 MyPort 中山 裕也 室長 YUYA NAKAMURA

保土ケ谷区出身。中学3年生の頃、スクールNEOに通い、塾長の久下沼先生に出会う。高校3年生から、同塾の講師に。大学卒業後、同塾に就職。2020年に「民間学童 My Port」を立ち上げ、室長に就任。

スクールNEOの生徒から、塾講師、そして学童の室長へ

中学生のとき、ここ「My Port」の母体である学習塾「スクールNEO」へ、生徒として通っていました。通ったのは中学3年生のときだけでしたが、非常に居心地がよく、悩み事も相談できる先生でしたので、卒塾後も進路の相談などで定期的に訪れていました。そして、高校3年生のときに、「ここでアルバイトをしないか」とお声掛けいただき、アルバイトで講師を始めました。そのまま講師を続け、大学3年生のときに「ここに残って欲しい」というお声をいただいたので、そのまま就職をしました。中学生に勉強を教えるなか、個人的に感じたことが、勉強嫌いになっている子が少なくない、ということでした。もちろん、塾ではそういう生徒さんに向けて色々指導したり、相談に乗ったりするのですが、中学生に嫌いな勉強を好きになってもらう、というのは、非常に難しく感じるときも正直ありました。勉強の基本すら身についていないお子さんを見ることもあり、小学生のうちから勉強の基本や自己肯定感を身につける大事さを噛み締めたんです。中学生では、定期テスト対策がメインになってしまうこともあって、点数にとらわれない、人間的な魅力を高めるには、どうしたらいいだろうと悩みました。元々、塾もそういう部分に非常に力を入れていましたが、より人間的魅力づくりや勉強の基本づくりに特化しやすいのが、小学生向けのサービスではないかな、と思い、学童の立ち上げを代表に申し出たのです。人間的な魅力づくりというのは、抽象的で難しいことではあります。「MyPort」では、専門性を持つ色んな大人が関わり、地域の人々のつながりの中で、手作りで子どもたちを育てています。その「手作り感」が人間の魅力づくりに重要だと思っています。子どもに対し「子どもたちが自分たちを大好きで、やりたいことを見つけられる子供になって欲しい」という共通の思いを抱く地域や保護者の大人達が集まり、目の前にいる子どもが今必要なこと、楽しめるものを提供する、それが「My Port」の大きな魅力だと思います。

国語や算数、英語などのカリキュラムの他に、その子に特化した学習を保護者と一緒に作り上げる。

「My Port」では、学びのバリエーションがとても豊富です。国語の書き取りや習字から始まり、算数の計算、英語、工作、社会・理科学習などたくさんの学びがあります。曜日ごとに、この日は国語、次の日は英語など専門の先生がいらして生徒が一緒に学ぶ時間を用意しています。一方、それとは別に速読や速算など、パソコンのシステムを使い子ども一人ひとりが学ぶ時間も用意しています。何を学ぶのかは、お子さんによって違います。そのお子さんが今抱えている課題、例えばかけ算や、繰り上がりの足し算筆算など、お子さんがそれぞれ抱えている課題に向けたカリキュラムを別に組んでいるのです。お子さんの課題については保護者の方と話し合い、今どんな力を伸ばしたいのか方向性を決めています。ここ「My Port」では私たちが提供したいカリキュラムだけを行うのではなく、保護者の方と相談しながら学習内容や体験内容を決めていきます。カリキュラム以外では、遠足や体験学習なども大切にしています。長期休みには教室を飛び出し、色々なところに足を運びます。動物園や水族館、科学館や大きな公園、劇場で演劇を鑑賞したり、国会や市議会などを見学したり、横浜に限らず、東京方面に足を延ばすこともあります。先日は、小田原の博物館へ行ってきました。なぜ、博物館かというと、最近子どもたちのあいだで「魚」が流行っていたからですね(笑)。目の前にいる今の子どもたちをみて、「今この子たちの関心を引き出せる体験は何だろう?」と毎回考え、遠足場所や体験学習も考えていきます。保護者の方から、「この間の経験は、子どもにとってすごく良かったです」というお言葉もいただくこともあります。外に行くばかりではなく、地域の方たちに「先生」として教室に来ていただき授業をしていただく機会も多くあります。体育の先生にかっけこの秘訣を教えてもらったり、トレーニング方法を教えてもらったり、美術の先生に、画材の使い方や表現技法を学んだりと、生徒の興味関心・保護者の方からのリクエスト、我々スタッフの願いなどをミックスして、様々な体験学習内容にチャレンジしています。生徒の笑顔や保護者の皆様から温かい声はとてもありがたく、嬉しく感じますが、成功体験にとらわれず、これからも色々なことにチャレンジをしていくつもりです。私たちがチャレンジをする姿は、子ども達にとっても良い影響を与えると思っていますから。

親子の時間を愛情を注ぐ時間にするために、学童ができること

保護者の方が子どもといる時間を充実できるよう、様々なサポートをしてあげたい。学童を作ったときから、その思いが強くあります。お父さんお母さんが仕事を終えて家に帰る頃って、すごく疲れていると思うんですね。そこで、もしお子さんが宿題が終わっていなかったら、やはり喧嘩になったり、家庭内の雰囲気が悪くなりがちになってしまうんじゃないかな。いくら可愛い我が子でも、疲れていたら嫌なところしか見えない、ということもあると思います。でも、親子が関われる短い時間のなかで、雰囲気が悪くなるのはとても残念です。親しか与えられない愛情というのも確実にありますから、家庭ではなるべく愛情を注ぐ時間を過ごして欲しいと思います。そこで、学習に関わる部分は私たちが今後を見据えて課題を出し、解決へと道筋を立てていきます。学習のやり方や目指す方向性は、学習指導要領の変更に合わせて、この10年で大きく変わってきました。親世代が学んだ学び方と、今の子どもたちの学び方は大きく異なります。子どもと関われる短い時間が、学習にとらわれた時間にならずに、家族の良質なコミュニケーションの時間になるように、専門性を持った我々が学習部分のご家庭の負担を軽減できればと思っています。その良質なコミュニケーションを生みやすくするために我々が取り組んでいるのが「Today’s lesson」です。この「Today’s lesson」は、私が中学生の時も塾に来るたびに書いていたもので、効果は自分自身が良く分かっています。お子さんには、毎回「自分の良いところ」「今日のハッピーラッキー」「今日のありがとう」を書いてもらいます。そして、保護者の方にも「お子さんのいいところ」を毎回書いていただくんです。講師からは、お子さんのいいところ、良い変化や出来事を書いて、1日の終わりに渡します。その「Today’s lesson」を親御さんが見て、家庭内の会話のタネにしていただきたいなと思っています。「Today’s lesson」では、「今日友達が困っているときに声かけてあげましたよ」とか、「今までだったら出来なかったドリルが、今日は投げ出さずにやりきってました」とか、お子さんの良い変化や気づきを講師が書いています。子どもの良いところをみんなで見てあげる、それを会話のタネにすることで、愛情を注ぐ時間の助けになるんじゃないかと思っています。お子さんの良いことばかりが書いてあるノートなので、子ども自身の自己肯定感にも繋がるノートにもなっています。

遠足では、道順も子どもたちで調べ、分からなくなったら人に聞く。生きる力を育む体験。

春休みや夏休みなどでは、遠足にたくさん行きます。行き過ぎて、どこに行ったかすぐに思い出せないくらいです(笑)。春はお花見、植物園、トランポリン、潮干狩り、夏だとプラネタリウム、農業体験、防災センターなど、ジャンルを絞らずさまざまな場所へ出かけています。遠足の目的のひとつは、子ども達にたくさんの経験をして欲しいから。今の子ども達は「将来なりないものがない」って言われがちですが、単純にどんな職業があるか、どんな世界があるか知らないだけという気もします。ですので、さまざまなジャンルの色んな場所へ行って、経験をさせていますね。今年の春休みは防災センターへ行ったのですが、ちょっと面白いチャレンジをしました。2つのチームに分かれて、子ども達の力だけで防災センターへ行ってみようというゲームをしたんです。もちろん、互いのグループに、私と代表がそれぞれ一緒に着いているのですが、大人は一切ヒントを出さず、どうしても困ったときだけ先生に聞けるSOSカードを3枚だけ渡しました。子ども達は、行く前に行き方をiPadで調べて「このバスに乗ればいいんだ」「あ、このバスみたことある!」など盛り上がっていました。当日は、バス停まで行くと、おばあさんが立っていました。子どものひとりが思い切っておばあさんに話しかけると、「防災センターなら、このバスに乗れば行けるわよ」と教えてくれ、子ども達も安心してバスに乗ることができ、無事に着くことができました。そうやって、町の大人と自然に会話して助けを求められることができたのは、文科省の生きる力に繋がってくるなと思いました。生きる力については、意識して、私たちもさらに取り組んでいこうと思っています。例えば、図書館にみんなで行ったときも、本を返す場所が分からなくなったら、「図書館の人に聞いてごらん」と言って、あまり助けません。もちろん、私たちが教えることはできますが、それだと私たちにしか聞けない子どもになってしまいます。子どもは図書館の人に聞いて、本を戻す場所が分かると、ちゃんとお礼も言っていました。そういう対人コミュニケーションの力は、今後の人生で何かにつまずいてしまっても、すぐに立ち上がれるような力になると思います。将来、そういう大人がいっぱいいる町になってほしいと思って、僕らも接しています。

勉強以外で輝く場を探したいお子さんにも。地域で支える学童保育

お子さんには色んなタイプがあって、勉強以外で輝く力を持っているお子さんもたくさんいます。でも、子どもには自分のどんなところを伸ばせばいいか分からず、学校の成績に左右され、結果的に自己肯定感が下がり、やる気や希望を失ってしまうケースも多々見受けられます。それは、まだ子どもだから仕方のない結果だと思います。だからこそ、大人たちがその子の伸ばすポイントを見つけ、世界を広げてあげる必要があるのだと思います。勉強以外でも生きていける道は世の中にたくさんあります。その目標を一緒に見つけてあげたいと思っています。そのために、私たちは色んなことにチャレンジをして、色んな大人と繋いであげ、色んな人と関わらせてあげようとしています。「My Port」の今後としては、さらに地域の方と繋がりを持ちたいと思っています。例えば、地域で手芸が趣味の方がいたら、その手芸を30分だけでも子どもに教えてもらうとか、地域の人と一緒に子どもを見てもらうなど、という試みもいいなと思っています。そういう体験が、子供たちにとって凄く刺激的になるだろうし、色んな大人と関わることで、自分は何が好きなのか、どういう大人になりたいのか、というのが見えてくると思うんです。これからも地域の方々と協力し合って運営していきたいと思っています。

 

※上記記事は2023年5月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

民間学童 MyPort 中山 裕也 室長

民間学童 MyPort中山 裕也 室長 YUYA NAKAMURA

民間学童 MyPort 中山 裕也 室長 YUYA NAKAMURA

  • 出身地: 横浜市保土ケ谷区
  • 趣味・特技: サッカー、お笑いを見ること
  • 好きな本: 朝井リョウ著『何者』
  • 好きな映画: 話題作
  • 好きな言葉: いまを全力で楽しむ
  • 好きな音楽: J-POP
  • 好きな場所: 教室

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